方言には独特のニュアンスがあり、これは標準語では伝えられない。大阪弁には「ほたえる」という言葉があり、またそれとは少し意味の違う「いちびる」という言葉がある。どちらも標準語での「ふざける」という意味の言葉だが、これらを標準語に置き換えてしまっては伝えたい意味が伝わらない。今年の大河ドラマの龍馬伝ではナレーションが土佐弁だ。これがとても良くてテレビの無機質な画面にふっと時代の匂いのようなものが漂ってくる。その土地の言葉でやってくれた方が、わからない言葉があったとしてもそこから感じられる独特の情緒が面白いのだ。▼方言には標準語に翻訳できない部分があり、そこが大事な部分だったりする。方言は感情の微妙なディテールをうまく言い当てることができる。メディア上における標準語万能な現状は、日本語を貧しいものにしているのではないかと思う。