ひとりでできるもん

高校の頃、数学の勉強にとてもハマっていて、授業とは別に自分で勝手にどんどん先のことを勉強していました。高2の後半にはもう高3の内容まで一人で全てやり終えてしまったんです。別に勉強することが特別好きって訳ではなかったし、むしろ宿題をさぼってばかりの駄目な生徒だったと思うんです。でも、あの時の数学の勉強は、本当に面白かった。誰かから教えられるのではなくて、自分一人で勝手にやるってことが良かったんだと思う。知らない場所に一人で出かける時のワクワクのようなものがあるんです。新しい概念との出会いが純粋に楽しくて、例えば極座標の概念を初めて知ったときに、そんな座標の取り方もアリなのかって新鮮な驚きがあるんです(デカルト座標だけが唯一の座標系だと思ってるわけだからね、その時点では)。新しい章に進むたびに新しい概念が登場して、その度に驚いたり感心したりする。そんな調子で楽しい楽しいでどんどん読み進めていってしまうんです。そうこうしていると、この「初めての出会いの瞬間」の楽しさを、授業に(というか先生に)奪われたくはないって気持ちがとても強くなるんです。何か新しいことを授業で教わるのって、推理小説のネタバレを聞かされるのに似て、とても興ざめなんです。一人でやってたときはあんなに楽しくて、驚きがあって、物事の新しい見方を初めて知った時の新鮮さ、嬉しさみたいなものがあったのに、授業として人から教えられると、どうしてこうもつまらなくて退屈なものになってしまうんだろう! ほんとそう思いました。その先生が授業がへただっただけかもしれないし、説明のスタイルが自分と合わなかっただけなのかもしれない。それもあるとは思う。でも、人から受動的に情報を受け取る場合と、自分で主体的に理解を構成しようとする場合との間に存在する本質的な違いということが、やはり根本の要因なのだと思います。ともかく、教えられる前に自分で勉強してしまうことの楽しさに目覚めてしまった自分は、その後他の科目でも同じようなことをするようになって、結果として授業はまともに聞かない(もう知ってる内容だから)、宿題もよくさぼる(自分の勉強で忙しいから)というかなり不真面目な、かといって勉強してないわけじゃなくむしろ勉強には人一倍熱心だという、教師からすればとても扱いにくい存在になってしまったのでした。