モノと一緒に捨てられるもの

約400冊の本の電子化が終了しました。で、今日ゴミの日に裁断・スキャン済みのその本たちをゴミ置き場に出してきました。裁断するときは特に何も感じなかったけど、捨てるとなったときに少し寂しさを感じ始めて、だから最後の記念にと思い捨てる本を並べて写真を撮ってその姿を残しておきました。本を捨てるということで何が寂しかったんだろうと考えてみたんですが、例えばある本は、雨に濡らしてしまったせいで紙がヨボヨボに波打ってるんです。その本を手に取ると、何年も前に自分がそれを読んでいたときの、通学中の雨でカバンと一緒に本も濡れてしまったという状況が、本の手触りを通して頭に浮かんで来ます。紙を見て触っているうちに、そういう忘れていたようなことも思い出せるんです。スキャンされた画像にはそういった紙の質感は何も無く新品まっさらのようになってしまっているので、pdfになったその本を開いても、さっき書いたような状況を思い出すことはもう無いだろうと思います。紙を捨てることで、その紙と結びついていた記憶や思い出も一緒に失われてしまったわけですね。それが寂しくて、捨てる本の写真を撮ったのも少しでも記憶や手がかりを残しておきたかったからなんだろうなと思います。モノを捨てることの寂しさってたぶんそこにあって、これは本に限ったことではないですね。モノを失うこと自体が寂しいというより、そのモノと一緒に過ごした時の思い出が失われることが、寂しいんです。必要の無いモノをいつまでも残してしまう「捨てられない人」というのは、こういった感覚が人より強いのかもしれません。