「人はよく独創の話をしますが、生まれおちたときから、この世の影響をうけ、邂逅によってさらに生まれ変わらされたとすれば、独創とは一の空語にすぎますまい。大切なのは模倣です。邂逅の相手を模倣すること。」亀井勝一郎の言葉だ。▼何事につけ上達のための最も優れた方法は、良いものを模倣することだろう。自分自身を型にはめることが重要だ。ところが、芸術的分野においてはこの原則が忘れられていることが多い。個性こそが大事だから、人の真似はしたくない、と。しかし、こうした態度は上達の速度を低下させるだけではなく、真の意味での独自性の表出をも阻害してしまうのではないか。「独自性よりも正しくあることがより重要だ」とポール・グレアムは述べている。求めるべきは「個性」などではなく、自分のビジョンを最もよく実現するための「正しい答え」ではないだろうか。