#019 偽薬

子供が怪我をしたときに、母親がチチンプイプイと言ったりする。これを言えば痛みが消える。そのように子供には思える。痛みはしばらくすれば勝手に消えるものだ。何もしなくても治るものに、母親が「痛いの痛いの飛んで行け」なんて巫女になっておまじないをする。すると、痛みが消えたのはおまじないをしてもらったからだという因果関係が子供の中で生まれる。時間の前後関係を因果関係と捉える。迷信というものが生まれるプロセスの一例だ。▼もっとも、現在の科学ではチチンプイプイで痛みが消えることをただの迷信であるとは言わない。なぜなら痛み(に限らず人間の感覚)というのは身体的・物理的な要因だけでなく心理的な要因も影響することがわかっているから。だから「心頭滅却すれば火もまた涼しい」し、ただの水でも薬だと言われて飲めば体調が良くなったりしてしまうのだ。