「たんぽぽの ぽぽのあたりが 火事ですよ」坪内稔典のこの句を初めて聞いた時、言葉の意味はわからなかったものの、響きのの良さ、リズムの良さは強く印象に残った。たんぽぽの「ぽぽのあたり」とはどのあたりのことか、それが火事であるとはどういう意味なのか。全くわからないことだらけの句だけれど、言葉の意味を離れた所にこの句の良さはあるのだろう。「ぽぽ」というのはどこかの方言か古語なのかと思ったが、どうやらこれは作者の造語で特に意味はないらしい。初めから言葉遊びとして作られた句だったのだ。作者の遊び心が楽しい。ぽぽとは具体的にどのあたりだろうか。わた帽子のことだろうと言う人がいた。なるほど、確かに語感的にあのフワフワした感じに似合っている気はする。ちなみに、作者はもう一つぽぽの句を詠んでいる。「たんぽぽの ぽぽのその後 知りません」