#033 世界風景

絵の背景となる景色を描く際に、なるべくその景色がどの特定の場所でもないようなものにしたいという場合がある。ところが、例えば街並の背景を描く場合に京都の街を参考にして描いてしまうと、当然のことながらその絵は「京都の絵」という雰囲気が強く出る。あくまで欲しかったのは「街っぽい街」であり、具体的にどの場所でもないような「背景らしい背景」であるのだけど、そうした「どこでもない場所」を描くのは案外に難しい。▼ところで、ブリューゲルは『雪中の狩人』でネーデルランドの村民たちの姿を描いている。厳しい冬の山がこの絵の遠景には描かれているが、平坦なこの地方に実際には山は存在せず、世界観を表すため創作されたものだ。特定の場所ではない風景らしい風景は「世界風景」と呼ばれ、この絵の風景も世界風景の一種だ。この世界風景という考え方は面白いと思う。